剣と盾 第5話


次にスザクがすべきことはなにか。
セシルとロイドが、ゼロレクイエムの頃と違い、スザクの話をまともに聞いてくれないように、ルルーシュはゼロの知名度をあげようとしている今の段階で、優しい世界を目指しているとは思えない。最終的に『ナナリーが幸せになる世界』であっても、それはイコール『世界平和』ではないのだ。
そんなルルーシュに、こちらが未来の情報を与えれば、真面目に考えてはくれるが、ブリタニアの罠の可能性も考えるだろう。ユーフェミアの騎士である自分の言葉をどこまで聞いてくれるか。もし事実だったとわかっても、今度はその情報を利用するため、表面ではスザクの話を理解し、協力するふりをして、黒の騎士団の策を行うため利用する。ゼロとは、そういう男なのだ。
ナナリーが死んだと思ったからこそ、ルルーシュは世界平和という『ナナリーの未来』ではなく『ナナリーが望んだ未来』を選んだ。
今のルルーシュと話し合っても、無駄ということだ。
別の道を示して計画を変える人間なら、ユーフェミアを操って殺す未来など選ぶはずがない。彼女はきっと、ゼロを、ルルーシュを説得していたはずだ。でも、彼女の言葉でさえ、ルルーシュには届かなかった。兄を殺したゼロを憎まず、 許し、迎え入れようとした彼女の無償愛でさえ、ルルーシュは受け入れなかった。腹違いとはいえ、妹であることに変わりはないのにだ。彼女を越えるほどの思いと言葉を、ルルーシュに向けることは不可能だろう。今のルルーシュがナナリーを守るための反逆者ゼロである限り、彼の憎しみも願いも、諦めさせることはできるとは思えない。

となれば、やはり道はひとつしかない。
ユーフェミア。
彼女がゼロに殺されないようにすること。いや、行政特区を宣言させないこと。

行政特区日本。
当時は素晴らしい政策だと思った。
ユーフェミアだけが差別を否定し、日本人に日本を返したいと考えてくれているのだと。こんな素晴らしい人はいない。自分がイレブンの希望ならば、彼女は日本人の救世主だと。その意思を継いだナナリーも、日本人の事をよく考えていて、みんなが幸せになれる世界を望んでいた。そのためには行政特区有効な手段なのだと思った。ゼロが、邪魔をしなければ。

でも、それこそ夢物語だと知ったのは、Cの世界でシャルル皇帝と マリアンヌ后妃が消えたあと、ルルーシュが皇帝として表に出るまでのあの1か月間の潜伏生活で。
行政特区の成立は、シュナイゼルも認めたぐらい素晴らしいものだったと言えば、 鼻で笑われた。ルルーシュだけじゃない。C.C.にもだ。
あれは、シュナイゼルがユーフェミアを利用した策で、よほど優れた補佐官が側にいなければ、数ヵ月と待たずに崩壊していた。ユーフェミアは気づいていないが、シュナイゼルから見れば、黒の騎士団と他のテロ組織の動きを封じるには、最高の一手。反ブリタニア組織を解体し、弱体化させるのに十分な策で、その間に、エリア11を完全掌握できる。
その後行政特区が崩壊すれば日本人は消え、ブリタニアの支配は元通りになり、政策の失敗はすべてユーフェミアがとることになる。
皇位継承権を捨てたユーフェミアは国に、リ家の離宮に戻され、コーネリアの監視かにおかれる。権力を失った、ただの少女であるあユーフェミアは、一生をそこで終えるか政治の道具・・・政略結婚をさせられただろう。
テロリストを弱体化させるだけではなく、ブリタニア皇帝に弓引くユーフェミアを無力化する最高の策でもあった。
それが、行政特区日本が成功したときのシナリオだったのだという。

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